こんにちは。
テアシスの川口太威智です。
今日は症例報告をさせていただきます。
今回の症例は、これからテアシスが特に力を入れていこうと考えている厄介なもの。
「ジストニア」です。
「ジストニア」とは自分の意思に反して、無意識に筋肉がこわばってしまう神経疾患のことを言います。
「全身性ジストニア」や「局所性ジストニア」などに分類されます。
そのうち「局所性ジストニア」は音楽のアーチストやスポーツ選手によくみられ、
今まで当たり前のようにできていた動作が突然できなくなります。
例えばドラム奏者が、足でのリズムを取れなくなったり
ピアニストが演奏しようとすると指が硬直したり
よく似たものとして、
プロゴルファーや野球選手の
「イップス」というものもあります。
テアシスではこれらが発生機序的に非常に近いものがあるので、
同じものとして研究を進めたいと思っています。
【職業】
ベーシスト
【診断名】
ジストニア
【発生時期】
3年前から発症
【症状】
ベースを弾こうとすると右手が異常に硬直して、弾けなくなる。
(具体的には右肩が異常にもちあがる。
右上腕が極度に内旋、
右前腕回内、
右手関節背屈
これらの動きが自分の意思とは無関係に異常な力で強制的に起こってしまう。
その状態が出てしまうととてもじゃないが、指での奏法もピックを使った奏法もできなくなるそうです)
右手の感覚がなくなる。
(ベースのコーチに採点(スコア)してもらうと、ここ数年自分のバンドの曲でも
50%程度しか弾けない曲が何曲もあった)
書痙(文字を書くときに震える)
常に息苦しい
不眠
よくイライラする
【治療歴】
心療内科
カイロプラクティック
アクティベーターメソッド
脳バランス
ミント療法
【テアシスプログラム施術スタート】
「初回 1/31」
臨床所見
非常に全身に緊張が見られ、
テアシスの軌可動検査をするときもかなり抵抗が強かった
呼吸が非常に浅く、呼気も吸気も細かく痙攣をしながら“頑張って”息をしているように見えた。
2回目 2/10
「初回の感想」
三日間体温上昇
全身がかなりだるかった
イライラしなくなり、精神的にリラックスができているような気がする
3回目 2/11
「2回目の感想」
「激しい緊張が緩んでいるような気がする」
「ベースを弾くと右手がひどく疲れる」
4回目2/20
「3回目の感想」
「呼吸が楽になってきている実感がする」
「背が伸びた(笑)」
5回目2/21
「4回目の感想」
だるい
やや熱っぽい
「施術中の外観」
安静時の呼吸が随分深くなってきた。
以前は呼吸のストロークが浅く、細かく痙攣しながら呼吸をされていました。
6回目 3/2
「5回目の感想」
「まぁまぁ体調が良い」
7回目 3/3
昨日の施術の後にベースのレッスン
「弾けるようになってる!」
8回目 3/13
今まで散歩したあと常に、右足が長くなっている気がしていて、その感覚をずーっと引きずるので気持ち悪かった。
それが最近は回復するのが早くなってきた。
9回目 3/14
「なんか最近、薬を飲まなくても普通に寝れてるんですけど…なんだこりゃ!?って感じです(笑)」
10回目 3/24
依然ベース弾けてる
呼吸がすごく楽
施術した川口の感想
「初めの頃はすごく全身が硬くて、カッチカチに固結びしたタコ糸を解くような感じだったのが、今日は非常にスルスルと糸がほどけるように施術が進んだ」
11回目 3/25
昨日の施術の反動なのか、筋肉痛のような感じがある
熱はなし
施術後は快調
12回目 4/3
ベース弾けてる
【ご本人のコメント】
「前に通っていた治療院は1回3万円以上。
それで何らかの変化があるのなら頑張れるのだけれど、頑張って通ったけれど何も変化を感じられなかった。
テアシスでは初日に変化を感じられた 。」
ベースが弾けていることについては、
「自分の感覚として弾けている実感があるということと、
コーチによるスコア的にも過去のデータと照らし合わせて、
何年も弾けなかったのが客観的に見ても弾けているということが数字で表されているので、
僕の思い込みではないと思います」
引き続き施術は継続していきますが、
ここまでの経過をレポートさせていただきました。
【考察】
この方の例を、過去に診たジストニアの患者様の例も照らし合わせて考察してみます。
世間一般では大半の解釈として、
ジストニアは「心の問題」や「脳の問題」として片付けられてしまっています。
確かに意識が引き金になって症状を引き起こしますので無関係ではありません。
しかし、この方のジストニアが発症している時の手の緊張のメカニズムは全て解剖学的に説明できます。
それはテアシスがずっと施術対象としてきた、
筋肉、骨格、神経、経絡のアンバランスによって起こる形そのものです。
この方の異常を起こしている手の緊張と、
テアシスの軌可動検査で評価した手の緊張の形がぴったり符合します。
骨格を支えている筋肉の偏りすぎている緊張により、
体がねじれすぎているのです。
そうすると、ちょっとした精神的な緊張をするだけでスイッチが入ったように筋肉が萎縮し、それによりねじれが増強します。
これをメンタルの問題だけで解決するのは並大抵のことではありません。
人間の心や脳に起こる緊張や雑念を取り払うことが容易ではないことは、
お坊さんが長年修行しても煩悩を払うことは難しい。とされていることをみてもよく分かります。
目指すべきことは、
たとえ精神的に負荷がかかっても、
たとえ緊張しても、
たとえヤバい💦と思ったとしても、
発症しない体の状態を作ること。
つまりどんな精神状態でも体がまっすぐであれば発症しない、ということです。
あとはその小さな成功体験を積み重ねることができれば、自信になります。
その自信こそが、
「もう俺は大丈夫なんだ」
という柔軟なメンタルを作ることができる、と考えています。
テアシスではカウンセリングやメンタルからのアプローチに対して否定はしませんが、
テアシスが考える改善のプロセスは
①体を先に整える
②そうすれば緊張するシチュエーションでも意外といけちゃう
③あれ?いけるかも?という成功体験を得る
④これを繰り返すと確固たる自信に繋がる
⑤なぜ緊張していたのかさえ、わからなくなる
⑥改善
というプロセスを経て良くなっていきます。
これは以前書いた、「パニック障害の治し方」でも全く同じ機序です。

ジストニアは糖尿病や高血圧症のように、
明確に数値によって決められる病気ではありません。
治ったのか、どうなのか?
境目がハッキリしません。
ただ、本人の「弾けている」という感覚と
客観的に第三者が観察して、数値化して
「弾けている」という事実があるので
ひとまず、改善しているとみて間違いないのではないかと思います。
もちろんこれでテアシスが「ジストニアを治した!!」などと豪語するつもりは毛頭ありません。
患者様ご本人の「治したい」という意思が第一。
加えて、家での注意点や
呼吸の仕方、首の過度の緊張を取るためのエクササイズなど
僕のアドバイスを本当に素直に聞いてくださり、しっかりと実行してくださりました。
そういったご本人の努力が改善したことの一番の要因なのは間違いありません。
僕が一番訴えたいのは、
「ジストニア」も「イップス」も、「パニック障害」も
決して一般的に言われているように、単に「心の問題」として片付けられるものではなく、
きちんと改善に向けて正しいプロセスを踏めば、それほど世の中で言われているような
不治の病ではない。
ということです。
もちろん、まだまだこれで終わりではありません。
どんなシチュエーションであってもストレスなく弾けるようになる所まで目指したいとご希望されていると思いますし、
今後も僕もとことんサポートさせていただくつもりです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。